アパレル業界の商品企画担当者の皆さんは、今こそ50代以上の女性市場を、と日々企画開発をしているところでしょう。日本の人口構成において50代以上の女性層は約2,500万人と非常に大きなボリュームゾーンです。購買力も高く、自分のための消費に積極的になるライフステージでもあります。
しかし、この大きなチャンスに対して、多くの企業が商品企画の難しさに直面しています。なぜでしょうか?
- 50代以上女性のニーズ把握の難しさ
若年層と比べて情報発信が少なく、SNSなどでのトレンド追跡が困難 - 体型変化への配慮
年齢を重ねた体型変化に対する適切なデザイン提案の難しさ - 「若作り」と「老け見え」の狭間
適切な大人の女性像の確立が困難 - EC化による試着・接客機会の減少
オンラインシフトで消費者の不安要素が増加。接客機会も減ったことでニーズが掴みづらい - 既成概念と実際のニーズのギャップ
企画者側の思い込みが生じやすい
特に近年のオンラインショッピング比率の上昇は、試着や対面接客の機会を減少させ、消費者の不安を増長させています。実際に着てみないと分からない「着心地」や「似合い感」をどう伝えるかが大きな課題となっているのです。
これらの課題に対して、新たなアプローチが求められています。そこで注目したいのが「服装心理学」の活用です。

服装心理学®に基づくファッションスタイリングの第一人者。大学で心理学を研究後、オンワード樫山でMDとして最年少でブランドを立ち上げ。その後リーバイ・ストラウスジャパンにてレディース全商品の需要予測職を経てスタイリストに。現在は社団法人日本服装心理学協会の代表・跡見学園女子大学 講師として、装いが人の心に与える影響について研究・発信も行う。
公認心理師資格を持ち、心理カウンセリングの手法を活用した商品企画コンサルティングも手がける。フェリシモをはじめ多数のアパレルブランドの商品企画を監修。著書に「最高にしっくり似合う服選び」(学研プラス)がある。
服装心理学とは?商品企画への新たなアプローチ
服装心理学とは、装いが人の心理に与える影響や、逆に心理状態が装いの選択に与える影響を研究する学問です。私はこの服装心理学を商品企画に応用することで、従来のアプローチでは見落としがちだった「心の満足」という側面からの商品開発を実現しています。
従来の商品企画では、トレンドやファッション誌の情報、競合他社の動向、過去の売上データなどを分析し、「何が売れそうか」という視点でアプローチすることが一般的でした。しかし、服装心理学では
「その服を着ることで、どのような気持ちになるか」
「どのような自分になりたいのか」
という内面からのアプローチを重視します。
特に50代以上の女性は、若い頃と比べて「他者からどう見られるか」より「自分がどう感じるか」を重視する傾向が強まります。服装心理学はまさにこの「内側からの満足感」に焦点を当てた商品企画を可能にするのです。
フェリシモの成功事例:服装心理学を活用した50代向けワンピース
私が最近商品企画監修を手がけたフェリシモの「凛と輝く自由をまとう 色ここちのいい ときめきワンピースの会」では、従来とは異なるアプローチで商品開発を行いました。
この企画は、フェリシモ社内の50代のプランナーたちからの「われわれ世代が着たいと思える服を作りたい」という思いから始まりました。自分たちが実際に着る立場として、市場にある50代向け服の多くに満足していないという課題意識があったようです。
心理カウンセリング手法による潜在ニーズの掘り起こし
私はまず、通常の商品企画会議ではなく、心理カウンセリングの手法を用いたヒアリングから始めました。単に「どんな服が欲しいですか?」ではなく、以下のような質問を投げかけました。

- これからの10年間の自分を考えてみた理想像は?
- これから行ってみたい場所やチャレンジしたいことは?
- これまでの人生で大切にしてきた価値観は?
このようなオープンな問いかけにより、プランナーたちからは
自分の感情を大切にしたい
これまで我慢してきた自分の好みを表現したい
他者のケアより自分のケアを優先したい
といった本音が次々と引き出されました。
ヒアリングからは、50代以上の女性が持つ普遍的な心理状態も見えてきました。
- 長年他者(家族や仕事)を優先し、自分は後回しにしてきた
- 体の変化を受け入れつつも、その変化を前向きに捉えたい
- 「若作り」はしたくないが、「老け見え」もしたくない
- 自分の感覚や好みに正直に生きたいという願望がある
- 心地よさと美しさの両立を求めている
商品企画への落とし込み:3つの「気分」に対応する3つのワンピース
このヒアリング結果をもとに、私たちは「気分」という切り口で商品を企画することにしました。50代以上の女性の生活シーンではなく、「その日どんな気分で過ごしたいか」という内面に焦点を当てる発想です。
結果として、以下の3つの「気分」に対応するワンピースを企画しました


1. RELAX(リラックス):穏やかな気持ちに包まれたい時の一着
- 色彩心理:暖かみのあるベージュと深みのある赤で心を温め、リラックス効果を促進
- デザイン:ゆとりあるシルエットで締め付け感がなく、前後2WAYで着用可能
- 特徴:アクセサリー代わりの首元リボンで、装飾品なしでも華やかさを演出
2. FOCUS(集中):新しい何かに向き合う時の一着
- 色彩心理:ネイビーを基調に、冷静さと集中力を高める効果を意図
- デザイン:シャープな変形襟とストライプで知的な印象を強調
- 特徴:ウエスト絞りの調整可能、前ボタンを開けてアウター風の着用も可能
3. ENJOY(エンジョイ):誰かとの時間を楽しむ時の一着
- 色彩心理:ピンクのアクセントカラーで幸福感と前向きな気持ちを促進
- デザイン:ウエストリボンの結び方で印象を変えられる遊び心のあるデザイン
- 特徴:華やかさと上品さのバランスを取り、特別な場にも日常にも対応
従来の商品企画と服装心理学を活用した商品企画の比較


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服装心理学を活用した商品企画のメリット
フェリシモの事例を通じて見えてきた、服装心理学を活用した商品企画のメリットは以下の通りです。
- 顧客との深い信頼関係の構築
心理的視点からのアプローチにより、「この会社は私のことを本当に理解している」という信頼感を生み出せます。 - リピート購入・定期購入の促進
単なる「欲しい服」ではなく「なりたい自分」を提供することで、継続的な顧客関係を構築できます。 - ブランドのストーリー性強化
服装心理学に基づく商品企画は、強いブランドストーリーを生み出し、マーケティングの差別化要素となります。 - 価格競争からの脱却
心理的価値を提供することで、価格以外の付加価値を創出し、適正な利益率を確保できます。 - EC時代の不安解消
試着できないオンラインショッピングの弱点を、心理的アプローチで補完できます。
アパレルメーカーで服装心理学を導入して商品企画をする場合の具体的なステップ
最後に、服装心理学を商品企画に取り入れるための具体的なステップをお伝えします。
単なる年齢や性別、収入などの属性分析から一歩踏み込み、「どう生きたいか」「何を大切にしているか」といった価値観や心理状態を分析します。質問紙調査だけでなく、インタビューやグループディスカッションを取り入れます
色彩、素材感、シルエット、ディテールなど、服装の各要素が与える心理的効果を整理します。例えば「このブルーの色味は、どのような心理状態をサポートするか」といった視点です。
実際にサンプルを作り、着用した際の心理的効果を検証します。「この服を着ると、どんな気分になりますか?」といった質問で心理的効果を測定します。
商品説明やビジュアル表現においても、心理的効果や「なりたい自分」を軸にしたコミュニケーションを設計します。単なる機能やデザイン説明から脱却し、「この服を着ることで得られる体験」を伝えます。
心を理解することで生まれる新たな商品価値
服装心理学を活用した商品企画は、特に50代以上の女性市場において大きな可能性を秘めています。この層は人口ボリュームが大きく購買力も高いにもかかわらず、従来のアプローチでは満足度の高い商品提供が難しかった市場です。
服装心理学的アプローチによって、「何を着るか」ではなく「どう生きるか」という本質的な欲求に応える商品開発が可能になります。それは単なる「モノ」ではなく、顧客の人生に寄り添う「体験」を提供することです。
フェリシモの事例のように、ターゲット層の心理を深く理解し、その心に寄り添った商品企画を行うことで、EC時代においても深い顧客理解と満足度の高い商品提供が可能になるのです。

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